ビックリするおばあさんが一番怖い

『おもゐつゝら』(1892年/明治25年)
大きな葛篭(つづら)からたくさんの妖怪が飛び出ておばあさんビックリ!
もうおわかりかもしれませんが、昔話の定番『舌切り雀』のラストシーンです。
妖怪たちがちょっとコミカルで見ているとなんだかカワイく思えてくるのに対し(カタツムリみたいなやつ特に)、おばあさんマジ怖いです。葛篭のタレ目もカワイイ。なのに、おばあさんときたら。
ものすごい余談ですが、子どもの頃、『舌切り雀』のお話で「スズメが糊を食べる」という部分がとても不思議でした。スズメって接着剤を食べるの!? と思っていたのです。が、大人になり、昔の洗濯糊はご飯をつぶして水でのばしたおかゆ状のものだった、というのを知り長年の疑問が氷解しました。すっきり。
閑話休題。
『舌切り雀』のエンディングですが、大きな葛篭から妖怪がうじゃうじゃ現れビックリしたおばあさんの末路にはさまざまなパターンがあるそうで、「妖怪に喰い殺される」「腰を抜かして気絶する」「命からがら逃げ出し改心する」などなど。昔話とか結構エグいエンディングが多いのですが、現代ではソフト路線に改変されがちなので「喰い殺される」エンドはほとんどお目にかからなそう。
おまけ。
芳年の兄弟弟子・河鍋暁斎の『舌切り雀』も違った路線でステキなのでご紹介します。

パステルタッチでほのぼの感がすごい。優しいおじいさんがスズメのお宿から帰宅するシーンなのですが、楽しい思い出がマンガの吹き出しみたいにマルで囲まれて表現されているのがおもしろいですね。
以上、『新形三十六怪撰』全36枚(+目次)でした。さまざまなスタイルで「怪」が描かれていましたが、お気に入りは見つかったでしょうか?
別の記事でも月岡芳年の作品を紹介しています。あわせてどうぞ!
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