• 更新日:2019年9月22日
  • 公開日:2012年12月8日


臨場感すごい

東海道五十三対 桑名 船のり徳蔵の伝(幕末の浮世絵師・歌川国芳の画)東海道五十三対 桑名 船のり徳蔵の伝 歌川国芳
歌川国芳広重三代豊国という当時の人気絵師3人が競演したシリーズ『東海道五十三対』の1枚。画題となっているのはその土地に伝わる伝説や物語、名物で、この桑名は嵐の海で突如現れた巨大な化け物にもたじろがなかった桑名徳蔵という船乗りの伝説が描かれている。まん丸目玉の化け物は恐ろしげだけどちょっとユーモアを感じる。


3枚ぶち抜きの迫力

讃岐院眷族をして為朝をすくう図(幕末の浮世絵師・歌川国芳の画)讃岐院眷族をして為朝をすくう図(1850年ごろ) 歌川国芳
曲亭馬琴の『椿説弓張月』のエピソードを画題にした3枚続きもの。3枚ぶちぬきでダイナミックに描かれているのは鰐鮫という想像上の怪魚。



まるで和製ハリウッド映画

鬼若丸の鯉退治(1845年頃)歌川国芳鬼若丸の鯉退治(1845年頃)歌川国芳
不気味な水紋を描きながら現れたのはとんでもなく巨大な鯉。その躰は血のように赤く、目は爛々と輝いています。それを静かに狙うのは鬼若丸(のちの武蔵坊弁慶)。これから始まる激闘を予感させる静かな迫力に満ちた作品です。


視覚的効果を最大に生かした縦長画面

芳流閣の決闘(1858年)歌川国芳芳流閣の決闘(1858年)歌川国芳
曲亭馬琴の傑作小説『南総里見八犬伝』の超有名バトルシーン。月光に照らされる芳流閣で対峙するのは八犬士の犬塚信乃と犬飼現八。多くの絵師が同じシーンを描いていますが、国芳の作品はカッコ良さが頭抜けています。


猫好きの作者自画像

歌川国芳 自画像(幕末の浮世絵師・歌川国芳の画)歌川国芳 自画像 歌川国芳
顔を隠しているが傍にたくさんの猫がはべっているので本人と知れる。国芳の工房にはつねに猫がたくさんいたそうで、国芳本人も猫好きらしい穏やかな性格かと思いきや、着ているどてらの柄は地獄変相図。この地獄絵は本人の大のお気に入りだったそうです。もう訳が分かりません。



次は歌川国貞(三代豊国)。三代歌川豊国としても知られる国貞は、浮世絵師NO.1の作品数を誇るといっても過言ではないほどの多作。オサレな背景の作品も有名。


あまりにオシャレ

御あつらへ三色弁慶(幕末の浮世絵師・歌川国貞(三代豊国)の画)御あつらへ三色弁慶(1860年) 歌川国貞(三代豊国)
まさかの背景チェック&3色グラデーション。すげーオサレです。本当に江戸時代の作品なのかと、オーパーツ的感覚になります。このまま包装紙とかに使えそう。3人の男たちもいかにも江戸っ子らしい粋なイケメンたちです。

普通に今っぽい

今四天王大山帰り(幕末の浮世絵師・歌川国貞(三代豊国)の画)今四天王大山帰り(1858年) 歌川国貞(三代豊国)
こちらも背景の太目のチェックが斬新な一枚。シンプルかつ大胆な背景が男たちのかっこよさを引き立てています。ちなみにこの4人は、 坂田金時、卜部季武、碓井貞光、渡辺綱で、彼らを粋でいなせな町火消に見立てています。


ファンシーすぎる浮世絵

御誂三段ぼかし 浮世仲之助(1859年)(幕末の浮世絵師・歌川国貞(三代豊国)の画)御誂三段ぼかし 浮世仲之助(1859年) 歌川国貞(三代豊国)
パステルカラーのお花模様とかめちゃくちゃファンシー。江戸女子も「かわいい〜」といったに違いない。浴衣姿のイケメン役者とのギャップが秀逸です。


渋×甘ミックス

誂織当世島(読み:あつらえおりとうせいじま)金花糖(1845年)(幕末の浮世絵師・歌川国貞(三代豊国)の画)誂織当世島(読み:あつらえおりとうせいじま)金花糖(1845年)歌川国貞(三代豊国)
こちらはかわいいチビッ子と綺麗な女性という華やかさを引き立てる渋い系背景。余談ですが、チビッ子が興味津々に見つめているのは本物の金魚ではなく、金魚の形をした砂糖菓子です。


コラージュという発想の新しさ

傾城恋飛脚 梅川忠兵衛 新口村の段(幕末の浮世絵師・歌川国貞(三代豊国)の画)傾城恋飛脚 梅川忠兵衛 新口村の段歌川国貞(三代豊国)
色っぽい湯上り美人の背景に浄瑠璃の稽古本を大胆にコラージュした斬新な作品。背景にこんなに文字を使うとごちゃっとしそうなのに……抜群のデザインセンスを感じます。


シンプルな美

今風化粧鏡(1823年)(幕末の浮世絵師・歌川国貞(三代豊国)の画)今風化粧鏡(1823年) 歌川国貞(三代豊国)
一転してこちらは背景を思い切って省略していますが、それがかえってスタイリッシュな印象に。鏡に写っている風美人画はよくありますが、紺と赤、黒と白の限られた色味が生み出すシンプルな美しさは現代的なデザイン性があります。

ちなみに『今風化粧鏡』は国貞の代表的美人画シリーズで全10枚。

次は、「明治写楽」ともいわれた豊原国周(とよはらくにちか)


影のアイデア

楽屋二階影評判 梅王 片岡我童(幕末の浮世絵師・豊原国周の画)楽屋二階影評判 梅王 片岡我童(1883年) 豊原国周
人気役者の楽屋でのようすを影絵を使って描いたシリーズ。影を使っているところがユニークですね。なんだかちょっと覗き見している気分にもなります。


サイケデリックジャパニーズアート

清正公荒木立像 佐藤正清 中村芝翫(1873年)(幕末の浮世絵師・豊原国周の画)清正公荒木立像 佐藤正清 中村芝翫(1873年)豊原国周
目が痛くなるほどのビビッドな色合い。同じ作者の役者絵でも先ほどの作品とは真逆のテイストです。


表情のおもしろさ

関三十郎(幕末の浮世絵師・豊原国周の画)関三十郎豊原国周
これまた随分方向性の違う役者絵です。真っ白な髪と髭のおじいさんに背景が赤、枠が緑とくるとなんだかサンタクロースっぽさも感じます。おもしろいのがこの表情。明治時代の作品らしく、写実的な表現で絶妙な憎々しさを描き出しています。


赤い!!!

音楽美人揃 植松務子 夾竹桃・獦子鳥(1878年)(幕末の浮世絵師・豊原国周の画)音楽美人揃 植松務子 夾竹桃・獦子鳥(1878年)豊原国周
赤い。とにかく赤い。明治時代の浮世絵といえばこのショッキングレッドとも呼びたくなるほど鮮やかな赤色が特徴なのですが、こちらの作品ではこれでもかとその赤色を使われています。

この女性は明治の皇后に仕えた女官という超セレブな女性なのですが、背景の赤により必要以上に色っぽい。

次は月岡芳年(つきおかよしとし)。浮世絵界自体の需要がなくなっていく幕末から明治に、バラエティに富んだ作品を発表した芳年。そんな彼についた異名は「最後の浮世絵師」。


まるで格闘漫画

芳年武者无類 源牛若丸・熊坂長範(幕末の浮世絵師・月岡芳年の画)芳年武者无類 源牛若丸・熊坂長範(1883年) 月岡芳年
平安時代末期の大盗賊・熊坂長範を討ち取る牛若丸を描いたもの。武者絵の名手・歌川国芳に師事していただけに芳年も武者絵を多く手がけています。さてさて、牛若丸といえばご存知、のちの源義経ですね。牛若丸の若々しい軽やかさ、それと対照的な熊坂長範のヒールっぷりがいいですね。格闘漫画のような雰囲気も感じられます。


ドラマティック鬼退治

大日本名将鑑 平維茂(1879年)(幕末の浮世絵師・月岡芳年の画)大日本名将鑑 平維茂(1879年) 月岡芳年
平安時代の武将・平維茂(たいらのこれもち)が戸隠山に隠れ住む鬼女を退治した有名な伝説を芳年が描くとこんなにもスタイリッシュかつドラマティックに。芳年はストップモーションのような一瞬を切り取った表現がとんでもなく素晴らしい。

暗闇に散る紅葉がまるで血飛沫のようでもあります。


孫悟空と月の兎

月百姿 玉兎 孫悟空(幕末の浮世絵師・月岡芳年の画)月百姿 玉兎 孫悟空(1889年) 月岡芳年
芳年の晩年の傑作シリーズ『月百姿』。これは月にちなんだ伝説などを題材にした全100枚の連作です。芳年は苗字と同じことから月に思い入れがあったらしい。まん丸お月さまをバックに宙を飛んでいるのは『西遊記』で有名な孫悟空。かわいらしい兎と一緒になんだか楽しそうですね。背景の黒と薄いピンクのコントラストがなんとも素敵。月百姿の全100枚は別記事で公開中です。

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