2020年は北斎生誕260年にあたるアニバーサルイヤー。
同年3月には新パスポートの査証欄、さらに2024年度から発行される千円札の裏面に北斎の代表作『富嶽三十六景』が採用されるなど、北斎への注目は今後ますます高まるばかり。
絵に興味のない人でも必ず目にしたことがあると言っても過言ではない『富嶽三十六景』「神奈川沖浪裏」。「グレートウェーブ」として世界からも愛される北斎の代表作中の代表作。
江戸時代において非常に珍しい91歳という長寿を全うした葛飾北斎。
70年の長きにわたる絵師人生のなかで描き残した作品はなんと3万点以上。ちょっと信じがたいような量です。
しかし、北斎の人生、特に若き日の北斎については資料が少なく不明な点がたくさんあります。
葛飾北斎の晩年の作品「【これが88歳の作品!?】葛飾北斎が老いてから描いた画が強烈すぎる【波の画だけじゃない】」
映画『HOKUSAI』は、謎多き葛飾北斎の生涯を、北斎とゆかりの深い2人の人物とのエピソードを中心に青年期、熟年期の大きくふたつに分けて独自の視点と解釈でヒモ解き、描き出すんだそう。
大作の予感漂う今作のメガホンを取るのは、大人気テレビドラマ『相棒』シリーズや大ヒット映画『探偵はBARにいる』で監督を務めた橋本一さん。
橋本監督はインタビューで、
「出来上がるのは、青春活劇か、江戸群像劇か、性と暴力の寓話か、老と妄想の夢幻劇か。そのいずれもが正体にして正体にあらずの摩訶不思議な作品に仕上がれば、齢五十の未熟者の本望。ご期待あれ!」とコメントしています。これはもう見るしかない。
さて、気になるキャストを見ていきましょう。
ではまず主人公・葛飾北斎。
こちらは北斎最晩年の自画像なのですが、笑顔なのに、いや笑顔だからこそ鬼気迫るものを感じます。とりあえず言えることは・・・絶対このおじいさん、只者じゃないな、ということですね。
葛飾北斎は、江戸時代後期に活躍した絵師で、現代の東京都墨田区で誕生しました。幼少期については不明で、19歳のときに絵の道に入り、20歳で本格デビューを果たしました。
その後、さまざまな画法を取り入れ独自の画境を切り開き、美人画、風景画、宗教画などなどあらゆるジャンルの作品を描き続けました。富士山をテーマにした『富嶽三十六景』や『北斎漫画』などは代表作のなかでも特に有名です。
絵以外のことにはとんと無頓着で、常に貧乏、家が散らかれば引越しをするという引越し魔でもあり生涯で引越した回数はなんと93回、画号を変えることもしょっちゅうで30以上もの画号を使いました。
天才・北斎といえども若い頃はバイトをしながら絵師をするなど苦労も多かったわけですが、そんな青年期を演じるのがこの方。
柳楽優弥。
抜群の演技力と独特のオーラで年々魅力を増してます。
コミカルもバイオレンスもシリアスもラブストーリーもなんでもこなす素晴らしい役者です。撮影を振り返って「監督とともに映画ならではの北斎像をつくりあげた」と柳楽くんは語っています。柳楽くんにしかできないような新しい北斎なんて、見たいに決まってる。
そして老年期の北斎を演じるのはこの方。
田中泯。
世界的舞踏家にして近年ではドラマや映画にひっぱりだこ。柳楽くんが歳をとって田中泯さんになるとか、なんだかとんでもない。
もともと北斎が好きだったという田中さん。北斎と同じく孤高の芸術の道を邁進する田中さんが、どんな画狂・北斎を演じるのかめちゃくちゃ楽しみです。
さて、本作でキーパーソンとなるのが、北斎を世に送り出した敏腕プロデューサー・蔦屋重三郎と、老年期の北斎とタッグを組んでいくつかの作品を発表したベストセラー作家・柳亭種彦(りゅうていたねひこ)。
まずは蔦屋重三郎から。
蔦屋重三郎は江戸時代中期から後期の出版業界を牽引した版元であり名プロデューサー。
黄表紙で有名な山東京伝やベストセラーを連発した曲亭馬琴を輩出し、北斎のほか写楽や喜多川歌麿といった天才絵師たちを見出し、世に送り出しました。ちなみにレンタルショップ「TUTAYA」は創業者が蔦屋重三郎の業績にあやかって命名したもので、子孫による経営などではないそうですのであしからず。
ヒットメーカー蔦重を演じるのはこの方。
阿部寛。
ローマ人から結婚できない男までどんな役でもハマっちゃう。
とりあえず阿部寛の蔦重は押しが強そう。あの顔で「君なら売れるよ!」とか迫られたら売れそうな気になります。柳楽若北斎とのからみは非常におもしろそうです。
続いて柳亭種彦。
柳亭種彦は、旗本の子として生れながら作家となった変わり種で、紫式部の『源氏物語』をベースにした大奥パロともいえる『偐紫(にせむらさき)田舎源氏』の大ヒットにより人気作家となりました。しかし、「天保の改革」の際に「風紀を乱す!」として長期連載中だった『偐紫田舎源氏』は絶版の憂き目にあい、失意のうちに種彦はその後まもなく他界しました。その急すぎる死に「自殺では?」との憶測も流れたとか。
柳亭種彦は北斎とも何作かタッグを組んでおり、自身の日記にも北斎とのやり取りを綴ったりしています。
そんな非業の人気作家を演じるのはこの方。
瑛太。
2018年の大河ドラマ『西郷どん』での大久保利通役が記憶に新しい。
柳亭種彦、ずいぶんイケメン設定ですね。田中泯さん演じる老熟した北斎とどんなタッグを見せてくれるのか非常に期待が高まります。
さらにもうひとりキャスティングが発表されているのが、青年・北斎がライバル視した美人画の巨人・喜多川歌麿。
「大首絵」というクローズアップの手法を美人画に取り入れ、女性の美しさをとことんまでに追求した絵師です。また、母親と子どもの浮世絵も多数残しており、画面からあふれ出る母親の子への愛に満ちた表情に歌麿らしさを感じます。
歌麿が美人画の第一人者として人気を博した裏にも名プロデューサー蔦重の大きな影響力がありました。
さて、北斎と同じく今も国内外で絶大な人気を誇る喜多川歌麿を演じるのは、この方。
玉木宏。
何歳になってもイケメン。
玉木さんの歌麿はフェミニストだろうから、絶対モデルから惚れられるでしょう。そんな玉木歌麿に柳楽北斎青年がどうやって突っかかっていくのか。非常に見ものです。
北斎の生涯ということは、今後、娘のお栄や同居してたこともある馬琴、同年代に活躍した歌川国芳や歌川広重なども必ず登場してくるでしょう。誰が演じるのか楽しみに続報を待ちましょう!
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